1型糖尿病の費用 その3 まとめ:インスリン代も考える【訂正】
サマリー
- インスリン製剤の種類:効き方別に5種類と剤形別に3種類、計15通りの種類がある。
- メーカーによる違い(商品名の違い)よりも、剤形による違いの方が値段に大きく影響する。
- 剤形別の価格の違いは、高額な順に、
プレフィルド製剤>カートリッジ製剤>バイアル製剤 となっている。 - CSII・SAPで使用するバイアル製剤はプレフィルド製剤の6割程度、カートリッジ製剤の7割程度の価格。
- CSIIは1ヶ月おき・ペン注射は2ヶ月おきに通うことができる。1ヶ月・2ヶ月おき通院の利点は、C101分と検査諸費分節約できること。
- インスリン代とSMBG加算、ポンプ加算は、毎月必ずかかる費用なので省くことができない。
- 【訂正】インスリン代とSMBG加算、ポンプ加算の記述が誤っていました。お詫びして訂正します。管理人が相当な勘違いをしておりました。
イントロダクション
前回・前々回と1型糖尿病の医療費についてまとめてきました。(記事タイトルも統一感を持たせるため改名しました)
今日は、インスリン費用について整理して、費用三部作を総括したいと思います。
インスリンの種類
こちらから一覧表をダウンロードできます(PDF)
インスリン製剤一覧表:日本糖尿病学会 The Japan Diabetes Society
インスリンは超速効型、速効型、混合型、中間型、持効型の5種類があります。
そしてそれぞれの製剤には、プレフィルドタイプ、カートリッジタイプ、バイアルタイプの3種類の剤形があります。
メーカー別に薬価を比べている記事があるのでご参考にしてください。2013年の情報となっており、若干古いですが現在でも大差はありません。
上記の記事では、似たような効き目の薬でもメーカーの違いで薬価が異なることに着目していますが、同じメーカーの同じ薬においても剤形による価格差は無視できません。
剤形ではどの薬も薬価の高い順に、プレフィルド > カートリッジ >バイアル となっておりこれが逆転することはありません。
例えば超速効型のヒューマログ(日本イーライリリー)では、以下のようになっています(()内は2016年度の新価格)。
プレフィルド 1キット3mlあたり:1,953円(1,952円)
カートリッジ 1筒3mlあたり:1,636円(1,632円)
バイアル 1mlあたり:390円(389円);3mlあたり 1,170円
超速効型
速効型
混合型
中間型
持効型
プレフィルド製剤
プレフィルドは針をつければすぐに使用できて、入っているインスリンを使い切ったらそのまま廃棄するという、薬剤と注射器が一体になったタイプです。
カートリッジ製剤
カートリッジを使うためには、ペン型の注射器を別途購入(だいたい3,000円前後)しなければなりませんが、長期的にはプレフィルドよりもお得になります。おおよそ15%-20%ほど安いようです。
バイアル製剤
バイアル製剤は、使い捨て注射器を使用することを想定したもので、病棟などで用いているものです。
グーグル:バイヤル製剤の画像
CSIIでは、患者が自らバイアル瓶から専用シリンジにインスリンを充填して使用します。
バイアル製剤は安い代わりに取り扱いが面倒だというところにあります。CSII利用者は空気が入らないようにシリンジに詰め替えなければなりません。
インスリン代と合わせると月の支払いはどうなる?
その前に、薬価の計算について。
薬価は”円”で記されますが、会計時にはいったん診療報酬点数に変換して合計点数を算出し、再度”円”に戻して請求されます。窓口では健康保険に応じて支払われます(3割負担など)。
Wikipediaに計算法が記載されているのでご参考に:
今回は面倒なのと、ほとんど変わらないので薬価をそのまま0.3掛けしてお示しします。
外来の診察料や検査代をまとめて1,000円(3割)ぐらいとしておきます。
インスリンは超速効型を30単位、持効型を10単位 計40単位/日として計算。
超速効型は1ヶ月に4本、持効型を1.2本。
超速効型にはヒューマログ、持効型にはトレシーバを選んでみました。
(例えばランタスは持効型で最も安いですが、多くのT1DMさんたちは2回打ちをされているかと思います。その分消費する単位も増えてしまうのでわかりやすくトレシーバにしてみました。)
MDIの場合
診察費:6,750円+検査費 = 8,000円ほど
プレフィルド使用(1ヶ月分)
薬価 1,953 x 4 + 2,619 x 1.2 = 10,955円
3割 3,300円
+ 病院費用8,000円
= 11,300円/月ほど
3ml カートリッジ使用(1ヶ月分)
薬価 1,636 x 4 + 1,847 x 1.2 = 8,760円
3割 2,700円
+ 病院費用8,000円
= 10,700円/月ほど
3ヶ月に1回かつカートリッジの場合(3ヶ月分)
薬価 1,636 x 12 + 1,847 x 4 = 27,020円
3割 8,100円
+ 病院費用 (7,500円 + 15,000円 x 3)x 3割 + 検査費等
= 8,100 + 16,800円
= 8,300円/月ほど
CSIIの場合
診察費:15,690円(5230点の3割)+検査費等 = 16,500円ほど
10ml バイアル製剤(1ヶ月分)
薬価 3,900 x 2 = 7,800円
3割 2,350円
+ 病院費用16,500円
= 18,900円/月ほど
2ヶ月に1回の場合(2ヶ月分)
薬価 3,900 x 4 = 15,600
3割 4,700円
+ 病院費用 (12,300 + 15,000 x 2 + 25,000 x 2)x 0.3 + 検査費等
= 4,700 + 28,690円
= 33,400円ほど(16,700円/月)
SAPの場合
診察費:27,780円(9260点の3割)+検査費 = 28,500円ほど
バイアル製剤(1ヶ月分)
薬価 3,900 x 2 = 7,800円
3割 2,350円 + 28,500円 = 31,000円ほど
まとめ
プレフィルドとカートリッジの差額は年間で6、7千円ほど
MDIでは、プレフィルドとカートリッジの差額は毎月500-600円程度です。
費用面というより好みの問題という感じですが、個人的にはカートリッジの方が注射器がかっちょいい+安いので好みです。
1・2ヶ月おきの診療にしても、インスリン代の差額は一定です。
ひと月あたりの診療費が安くなる分、剤形の違いによるインスリン費用の差が目立ってくるかもしれません。
MDIで2ヶ月おきは最安!薬代を含めて8000円代/月に!!
MDIの場合、基本料金に加算されているのはSMBG加算のみなので、その分基本料金の割引率が相対的に大きくなります。
インスリン代はCSIIのバイアルに比べ2割-4割高くなっていますが、それでも月の費用は1万円を大きく下回ります。
総額に比して基本料金の比率が大きいことと、3ヶ月に1回の診察が認められている分、CSIIやSAPに比べて大幅にお得感が出てしまっています。
安いのはいいことですが、MDIとCSIIの価格差が開きすぎてしまって、「ライフスタイルに応じた選択」というよりは「経済面での制約」によってCSIIが選択肢になりえない場合が多いでしょう。厚生労働省、なんとかしてください。新型iPhoneでも月5000円で買える時代ですよ。
CSIIは1ヶ月おきができる:ひと月に約2000円お得
CSIIは月に1回の通院で、総額約19,000円/月かかります。2ヶ月に1回の通院では約17,000となり2,000-2,500円ほどお得になります。それほどお得感はありませんが。CSIIを使うなら、1ヶ月おきにしてもらうことで少しでも節約できます。
SAPは必要な時だけ使う、というやり方もできる
SAPは1日4回のSMBGが必須なので、どうあがいても診療費は1型糖尿病診療のMaximumになってしまいます。なんと1ヶ月30,000円!
これだけ高額だと、SAPを365日使い続けるというのはよほど特別な場合のような気がします。ポンプとCGMを両方使っているとあっという間に刺すべき部位がなくなって全身穴だらけになってしまいますしね(笑)。
Minimed 620Gは単独でCSIIとして利用できるので、CSIIを利用しながら好きな時にCGMを組み合わせることができます。月に応じてCGM加算をつけたり、CSII加算のみにしたりすることができるのです。
また、非公式ですが、CGMセンサーは2・3回使い回すことができるようです。
さいごに
ポンプをつけ始めて1週間経ちました。
カーボカウンティグを実生活で実践していくためには、3Cが3つ揃うことが重要だと感じます。すなわち、初心者には、カーボカウンティング・CSII・CGMの3つがあると心強いです。なかなかMDIとSMBGだけでカーボカウンティングをマスターするのは大変です。
しかし、その3つを実現するSAP療法は、現状でカーボカウンティングを実践するための最高の方法であることは間違いありませんが、便利なだけに経済面の負担が大きくなりすぎ、現実的ではありません。
CSII単独であっても費用はかかります。確かにペン注射と比べるとひと月当たりの負担は最大で2倍を超えます。しかしそれでも、2ヶ月おきの通院や医療費控除をうまく使うことで、費用を抑えることができることがわかりました。
ポンプを使ってみて個人的に思うことは、
「ペン注射では、ベーサル量の調整はごまかし程度にしかなっていない」
という実感です。
私の場合、日中と就寝時では必要基礎量は全然違っていました。就寝時でも、入眠期と早朝時で必要量は一定ではありませんでした。CGMを使って「いつ下がっていつ上がるのか」を知り、ポンプを使って「必要量をきめ細かく調整する」ことができました。
そして「血糖値が下がってきた」と感じたらすぐに基礎量の注入を止めることもできます。低血糖を予防したり、重症化を防ぐことができます。
これらのメリットは決してペンでは成し得ないことです。
逆に、費用面の問題や、注入回路のトラブルは少なからず起こること、つけっぱなしにすることで生じる皮膚トラブル、長時間外しておけないこと、などはポンプ療法のデメリットになっています。
ポンプの良さ・ペンの良さをよく考え、経済面でも無駄がなようにしていきたいですね。長く付き合っていかなければならないものだからこそ、とても大事なことです。
以上で1型の費用3部作は終了です。お付き合いありがとうございました。